〝知る〟ことの重さ。悩んだ末に出した私の答え

診断から今〜私の記録〜
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はじめに

この病気は〝遺伝が関係している〟とは先生からもきいてわかってはいました。

でも当時の私はまだ、『家系に癌になった人なんていなかったのに、どうして私はこの病気に・・・』と自分のことしかみえていませんでした。

『自分の体のことだけではなく、家族にも影響があるかもしれない』—— 本当は、考えれば気づけたはずのこと。でもその視点は、ある日突然、目の前に現れたのです。

医大で〝遺伝子検査〟についての説明を受ける機会がありました。

今回は、そのときのこと、そして私がどんな思いで選択をしたかを綴ってみたいと思います。

これから同じような説明を受ける方や、検査を検討をしている方にとって、少しでも心の整理のヒントになれば嬉しいです。

遺伝子検査についての説明

医大での初診の際に、医師から「必要があれば、遺伝子カウンセリングを受けてみませんか?」と提案がありました。

別日に予約をして、後日に私は夫と紹介された専門外来を受診。

遺伝子カウンセラーの先生から、丁寧な説明を受けました。

検査の内容は、APC遺伝子に変異があるかどうかを調べるというもの。

この変異が見つかれば、自分が家族性大腸ポリポーシスであることが、遺伝的に証明されるだけでなく、将来的に自分の子どもや兄弟姉妹にも影響が及ぶ可能性がある、というものでした。

さらにこの検査では、将来発症するかもしれない別の病気のリスクが分かる可能性がある、つまり、この病気とは関係ない、〝別のなにか〟まで知ってしまうかもしれないという話もありました。。

そしてもし、自分の遺伝子に異常がみられれば、当然、父や母、姉や息子といった血縁者にも関係してくる、つまりこれは、自分だけの問題ではなく、家族全体の将来やライフプランにまで関わる、とてもスケールの大きな話だったのです。

さらに私のこの病気が遺伝的に証明されたとして、子どもへの発症率は1/2の確率だそうです。

そのため、子どもにも〝遺伝子検査が必要化かどうか〟まで話が広がり、戸惑っていきました。

話を聞きながら、私は思いました。

『知ることは、大事なこと。でも、知らないままでいられる〝優しさ〟もあるんじゃないか。』

私が出した答え

私は、遺伝子検査を〝受けない〟という選択をしました。

それは、「知るのが怖かったから。」という理由だけではありません。

もし検査で陽性だったら、私はきっと——

〝家族に遺したこと〟や〝これから生まれてくる子どものこと〟まで思い悩み、自責の念で押しつぶされされていた気がします。

もちろん、知っておくことで準備できることもあるし、医学的にはとても意味があることなのだとも理解しています。

でも私にとっては、まず目の前の生活や治療に向き合うことが何より大切で、それ以上のことを今、いっぺんに背負いきる覚悟がどうしても持てなかったのだと思います。

説明を聞きに行ってよかったと思えた

それでも、遺伝子検査の説明を聞きに行ったこと自体は、今では本当に良かったと今は思っています。

ただ〝検査をすすめられた〟というだけであったら、私はずっとモヤモヤしたままだったかもしれません。

でも、きちんと説明を受けて、自分で考えて、自分で選んだからこそ、〝検査をしない〟という選択にも意味を持たせることができたと感じています。

「悩んだ末に、自分で決めたんだ。」
その事実が、こんなにも心を軽くしてくれるなんて、あのときは想像もできませんでした。

おわりに

私の選択が〝正しかったかどうか〟は、今でも分かりません。

でも、自分にとって〝今、本当に必要なこと〟と〝そうでないこと〟を整理する時間を持てたことは、大きな収穫でした。

遺伝子検査は、身体のことを〝知る〟手段であることと同時に、家族の未来を〝考える〟きっかけにもなります。

とても大切なことですが、「心が追いつかないまま、急いで結論を出す必要はない。」私はそう思っています。

もし、これから遺伝子検査を検討している方や遺伝子検査について興味をお持ちの方がこの文章を読んでくださっているのなら、

どうか、焦らずに。

〝知ること〟の意味を、あなた自身のペースで、じっくり考えてみてください。

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